忘れられたジャズの黄金時代~その1
皆さんは、“ジャズ”と聞いてどんな音楽を思い浮かべるでしょうか?
昨今、ジャズと言えば、殆どの方は、いわゆるモダンジャズを思い浮かべるようです。
おしゃれなバー等で流されている大人の雰囲気を作っているあの音楽です。
マイルス・デイヴィスやソニー・ロリンズ等彼らの演奏こそがジャズらしいジャズとしてありがたがられています。
ジャズの歴史(何が正しいのかは明確ではありませんが)を見ると、1910年頃のニューオリンズの黒人たちの間でディキシーランドジャズというスタイルのジャズが生まれており、これが一般的なジャズ演奏の最初のスタイルではないでしょうか。ジャズ演奏のスタイルは、1920~1930年代を中心とするディキシーランドジャズから、1930~1940年代を中心に白人にも波及したスイングジャズへと発展し、この時代にジャズは大衆に受け入れられました。
数々の名曲、名歌手、名プレーヤーが生まれ、レコードやミュージカル映画は大衆娯楽として栄華を誇りました。ダンス音楽として、多くのラヴソングのヒット曲として大衆に親しまれましたが、1940年代後期になると、スイング時代の単純な音楽が飽きられ、小編成によるコンボ演奏でアドリヴ演奏中心のややマニアックな新しいジャズ演奏が現れ、これがモダンジャズと呼ばれるスタイルです。
こうして見ると、決してジャズ=モダンジャズというわけではありません。
しかし、残念なことに、モダンジャズ以外のジャズは人々の認識から外されてしまっているようです。
特に、1930~1940年代を中心(録音は1960頃まで続いています)に栄えたスイングジャズ時代には、時代に関係なく楽しめる数々の名唱名演奏が残されています。私はこの時代のジャズを黄金時代と呼んでいます。
今では、忘れられてしまった当時の名録音(私の独断選考ですが)を紹介したいと思います。
1曲目 先生のリンゴ An Apple For The Teacher
歌 ビング・クロスビー、コニー・ボスウェル
https://www.youtube.com/watch?v=maPxhzOQ6_4
1939年映画「ザ・スター・メイカー」の挿入歌として録音されました。デュエットの二人が楽しそうでほっこりします。ジャズを歌うなどという構えなど全く感じられず、普通に唄えばジャズボーカルになってしまうといった自然さは、本物のジャズ歌手と感じさせてくれます。コニー・ボスウェルの歌声はいかにもレトロっぽくて古き良き時代を彷彿させてくれます。ビング・クロスビーは、アメリカショービジネス界の超大物スターで1930~1950年代にトップスターとして君臨した大歌手です。あまり知られていない録音ですが、私のお気に入りです。
2曲目 ジングル・ベル
歌 ビング・クロスビー、アンドリュース・シスターズ
https://www.youtube.com/watch?v=cUE4GEIP-_4
1943年の録音。ビング・クロスビーは、ホワイト・クリスマスの名唱で知られていますが、3人姉妹のコーラスグルーブ、アンドリュース・シスターズと歌っています。これほどゴキゲンでジャズっぽいジングル・ベルもなかなかありません。
3曲目 Who
演奏 ベニー・グッドマン・トリオ
https://www.youtube.com/watch?v=-3OMRiPKJBg
1935年録音。キング・オブ・スイングと言われたクラリネットの名手ベニー・グッドマン率いる、ピアノ:テディ・ウイルソン、ドラムス:ジーン・クルーパのトリオ演奏の質の高さに驚かされます。軽妙でさらっと演奏してしまいますが、テンポ感の良さやソロ技術の高さは舌を巻くほどです。
以上、先ずは3曲をご紹介しました。
楽しんでいただけましたでしょうか?
モダンジャスを思い浮かべていた方には、違和感に困惑されるかも知れません。
私は、この当時の音楽に、なり振りを超えた真心を感じます。そして、理屈抜きの楽しさが伝わります。
もし彼女や彼氏を誘って、そこにモダンジャズの生演奏があれば、ムードの良いところに連れて行ってくれたと感謝されるかも知れませんが、ここで紹介したような生演奏に遭遇したなら、演奏のあまりの楽しさに貴方は忘れられてしまいそうに思えてなりません。(笑)
私も、モダンジャズを楽しみますが、スイング期の録音も今でもCD等のメディアを通じて楽しむことができます。埋もれていたジャンルの発掘で、古くて新鮮な楽しみを味わってみてはいかがでしょうか?
これからも、黄金時代のジャズについては続編にて紹介させて頂きますので、お楽しみにしてください。
今日のところはこのへんで!